離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「そんなの嘘だってわかってるくせに。デートもキスも、忍さんがはじめてです」
「まぁ、そうだろうとは思ってたけど、それでも少し妬いた」
「……本当に?」
 
 驚いたように問いかけられ、苦笑しながらうなずいた。
 
「そんな些細なことで嫉妬するのははじめてだから、自分でも戸惑ってた」
「うれしい」
 
 琴子はそう言って、俺の肩に両腕を回す。
 
 ぎゅっと密着されて、彼女の体の柔らかさを感じた。
 
 頬に触れたサラサラの髪に、ふわりと感じる甘い香り。
 
 ずっと愛おしいと思ってきた。
 
 けれど絶対に俺のものにはならないと思っていた自分の妻が、腕の中にいる。
 
 抑えていた欲望がこみあげてきて、俺は奥歯をかみしめる。
 
「抱きつかれるのはうれしいが、そろそろ理性が限界だから、離れてくれ」
 
 ぽんぽんとなだめるように背中を叩くと、琴子は俺に抱きついたまま「いやです」と首を横に振る。
 
 聞き分けの悪い彼女の肩をシーツに押しつけ組み敷いた。
 
「いやです、じゃなくて。いい加減にしないと、襲うぞ」
 
 そう言って睨むと、彼女の頬がみるみる赤くなる。
 
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