離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 しばらく言葉につまったあと、「……襲ってください」と恥ずかしそうに言われ、血液が沸騰するかと思った。
 
「お前なぁ……」
 
 こっちは琴子の体調を気遣って必死に我慢してるっていうのに。
 
 人の気もしらないで。
 
「ずっと忍さんに触れたかったし、触れてもらいたかった。いっぱいいっぱい抱きしめてもらいたかった。でもそれを我慢しておりこうにしてきたんですから、ご褒美をくれたっていいじゃないですか」
 
 そう主張する琴子に、ぷっと噴き出してしまった。
 
 どうやってもあきらめる気はないようだ。
 
 体調が万全じゃない今日は、おとなしく寝かせてあげたほうがいいとはわかっているけれど、かわいい妻に誘われて我慢できるほど大人じゃない。
 
「琴子は意外と頑固でわがままなんだな」
 
 観念した俺が琴子のパジャマのボタンを外しながら言うと、彼女はこちらを見上げる。
 
「がっかりしました?」
「……いや、わがままな琴子がかわいすぎて困ってる」
 
 首筋にかみつくようなキスをして、白い素肌を優しくなでる。
 
 服を脱ぎ捨て抱き合うと、体温や鼓動が伝わってきた。
 
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