離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 よろこびが湧きあがると同時に、相反するふたつの衝動に駆られる。
 
 彼女の純粋さをそのまま守り続けたいという庇護欲と、めちゃくちゃに汚して俺だけのものにしたいという支配欲。
 
 自分でもゆがんでいるとは思うけれど、どちらも素直な気持ちだった。
 
「――悪い。もう手加減できそうにない」
 
 そう断って、琴子の腰を引き寄せる。
 
「え、忍さん……?」
 
 意味がわからず瞬きをした琴子は、大きく体を揺さぶられ甘い声をあげた。
 
 声をこらえる余裕もなく、何度も俺の名前を呼ぶ。
 
 俺もこれが夢じゃないとたしかめるように、何度も「琴子」と彼女を呼んだ。
 
 お互いの呼吸が乱れ、肌が汗ばむ。このまま溶けてひとつになれたらいいのに。
 
 腰を強く押しつけると、琴子の背中がびくんとしなった。
 
「んん……っ!」
 
 細い悲鳴が上がり、緊張してこわばった体がゆるりと弛緩していく。
 
「大丈夫か?」
 
 考えてみれば抱き合うのは久しぶりだし、彼女はこれが二回目だ。
 
 ちょっと激しすぎただろうかと心配になって琴子の顔をのぞきこむ。
 
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