離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 目が合うと、彼女はとろんとした表情でうなずいた。
 
「ん……。ごめんなさい。気持ちよすぎて、ぼーっとしちゃいました」
 
「無理してないか?」
 
 体を離そうとすると、琴子が俺の首に腕を回す。
 
「やだ。まだくっついていたいです」
「こら」
 
 こっちは何度だって琴子を抱きたいけれど、彼女の体調を考えてなんとか一回で我慢しようとしているのに。
 
 こうやって無邪気に誘惑されると困る。
 
 理性が崩壊する。
 
 俺が険しい顔をしていると、琴子の眉が下がった。

「ぎゅって抱き合いながら寝るの、ダメですか?」
「く…………っ」

 思わず奥歯をかみしめる。
 
 なんだそのかわいいお願いは。
 
 愛する妻のわがままは聞いてやりたい。
 
 でも、そんな状況で寝るなんて、ほぼ拷問なのでは。
 
 そんな葛藤をする俺を、琴子はじっと見つめていた。
 
 必死に理性を振り絞り、「わかった」とうなずく。
 
「忍さん、大好き」
 
 無邪気に抱きついてきた彼女の髪をなで、「俺も、愛してるよ」とささやいた。
 
 笑い合って、じゃれるような短いキスをする。
 
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