離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 ちなみにホテルジュメイラとの契約も無事まとまり、アハメッドは私たちの披露宴にもぜひ参加したいと言ってくれていた。
 
 テーブルの上には上條不動産の今後の予定や、招待する予定の議員関係の選挙スケジュール。
 
 そしてさまざまなホテルや式場のパンフレットが並べられている。
 
「時間は有限ですから、さくさく決めていきましょう」
「その考えには同意しかないな。せっかくの日曜をこんな打ち合わせで潰すよりも、さっさと終わらせて琴子とふたりきりになりたい」
 
 さらりと甘い発言をされて、頬が熱くなった。
 
「忍さん、なにを言っているんですか……っ」
「副社長。いちゃいちゃするのは私が帰ってからにしてください」
 
 能面のような表情を浮かべる岩木さんに、「すみません」と謝る。
 
「あ、いえ。琴子さんが謝られる必要はありませんから」
「そうだぞ。悪いのは日曜の朝から新婚家庭に押しかけてくる空気の読めない秘書だからな」
「忍さん!」
 
 そんなやりとりをしていると、岩木さんが「ぷっ」とふきだした。
 
 肩を震わせながら、声をあげて笑う。
 
「岩木さん?」
 
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