離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
どうしたんだろうと思っていると、岩木さんは目元を拭いながら「いえ、すみません」と首を横に振った。
「琴子さんにデレデレになっている副社長がおもしろくて」
「デレデレって」
「結婚前は『愛情のない政略結婚なら、相手の機嫌を取る必要がなくて合理的だ』なんて情緒もクソもない発言をしていた副社長が、こんなに幸せそうにしているなんてねぇ」
「岩木」
余計なことを言うな、と言いたげに忍さんの声が低くなる。
「え、忍さん、そんなことを言っていたんですか?」
驚いて彼を見ると、口をつぐんでしまった。
その表情を見て、事実なんだろうと察する。
「仕事一筋でプライベートを疎かにして、一生そんなさみしい人生を送るのかと心配していたんですが、副社長も人間らしい幸せを見つけることができたようで、ほっとしています。琴子さん、本当にありがとうございます」
「いえ、私はなにも……」
私が首を横に振ると、岩木さんが表情をゆるませた。
「今の副社長があるのは、琴子さんのおかげですよ」
本心から言ってくれているのが伝わる、優しい声だった。
「琴子さんにデレデレになっている副社長がおもしろくて」
「デレデレって」
「結婚前は『愛情のない政略結婚なら、相手の機嫌を取る必要がなくて合理的だ』なんて情緒もクソもない発言をしていた副社長が、こんなに幸せそうにしているなんてねぇ」
「岩木」
余計なことを言うな、と言いたげに忍さんの声が低くなる。
「え、忍さん、そんなことを言っていたんですか?」
驚いて彼を見ると、口をつぐんでしまった。
その表情を見て、事実なんだろうと察する。
「仕事一筋でプライベートを疎かにして、一生そんなさみしい人生を送るのかと心配していたんですが、副社長も人間らしい幸せを見つけることができたようで、ほっとしています。琴子さん、本当にありがとうございます」
「いえ、私はなにも……」
私が首を横に振ると、岩木さんが表情をゆるませた。
「今の副社長があるのは、琴子さんのおかげですよ」
本心から言ってくれているのが伝わる、優しい声だった。