離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「気に入った式場はあるか?」
 
 忍さんは私の隣に座り、パンフレットをのぞきこんだ。
 
 自然に腰に手を回し、私の体を引き寄せる。
 
「どれも素敵で迷っちゃいます。忍さんはどこがいいですか?」
 
 言いながら忍さんを見上げた。
 
 綺麗な横顔が間近にあってドキドキする。
 
 私たちは夫婦でもう一緒に暮らしているのに顔を見るだけでときめいてしまうなんて、忍さんに知られたらきっとあきれられるだろうな。
 
「規模が規模だし国内外の要人も招待する予定だから、この辺りだろうな」
 
 忍さんは格式高い老舗ホテルや外資系の高級ホテルをいくつかピックアップした。
 
 どれも海外セレブの宿泊や、国際会議を開催した実績があるホテルだ。
 
「たしかに。セキュリティがしっかりしたホテルのほうが安心できますもんね」
 
 私が感心しながらうなずくと、忍さんが「悪いな」となぜか申し訳なさそうな顔をする。
 
「なにがですか?」
「ふたりの披露宴のはずなのに、招待客の大半が仕事関係になって」
 
 彼の気遣いに、微笑んで首を横に振った。
 
「大丈夫ですよ。ちゃんと友人も呼ぶ予定ですし」
 
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