離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
2 政略結婚の条件 忍side
◆ 政略結婚の条件 忍side 

 
   

「では、この結婚はお受けするということでよろしいですね?」

 男性秘書の岩木の言葉に、俺はパソコンのディスプレイに視線を向けたまま「あぁ」とうなずく。

「副社長。せめてお相手の写真くらい確認されては」
「家柄は確認した。与党の一ノ瀬議員のひとり娘だろう?」

 一ノ瀬議員のことはよく知っている。

 各方面に大きな影響力を持ち、次の組閣では重要ポストに就くだろうと噂されている実力派の政治家だ。
 
 スーツを身に着けた精悍な姿は見栄えするため、男性だけでなく女性からの支持も多いと聞く。

「政略結婚に必要なのは会社へのメリットで相手の容姿はどうだっていい」

 手を止めて言うと、岩木がわざとらしいほど大きなため息を吐いた。

「本当に副社長は情緒がないというかなんというか……。そんなんじゃ幸せな結婚生活は送れませんよ」
「幸せな結婚生活なんてはなから求めてない。愛情のない政略結婚なら、相手の機嫌を取る必要がなくて合理的だろ」

 今までの恋愛を思い返しながらそう言う。

 昔から異性からモテたが、長続きはしなかった。

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