離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 わがままを言ったり甘えたり俺の気を引こうとする恋人とのやりとりが面倒で距離を置くと、冷たいと責められた。

 別れてもすぐに恋人はできるからわざわざ引き留めようとも思わなかったし、仕事が忙しくなると恋愛自体に興味がなくなった。

「あなたはそう思っていても、お相手の女性も同じ考えとは限りませんよ」
「政略結婚にうなずくような相手だ。恋愛に興味がなく打算的な女に決まってる。それにもし俺のスタンスに不満があるなら離婚すればいいだけだ」

 エリート政治家一族に生まれたお嬢様だ。

 きっと贅沢な生活に慣れたわがままで身勝手な女だろう。

 ほしいのは円満な家庭ではなく、一ノ瀬議員の持つ影響力と人脈だ。

 それを最大限に利用しコネクションを作ればもう用はない。

 結婚生活は二年も続けば十分だ。

 俺がそう答えると、岩木が「うわぁ」と顔をしかめる。

「モテすぎると人格がゆがむんですかね」
「誰の人格がゆがんでるって?」

 聞き捨てならない発言に眉をひそめると、岩木は「さぁ、誰のでしょうね」と涼しい顔で肩を上げた。

 彼は俺より十歳上で、もともとは社長である父の秘書を務めていた。
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