離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 男のうしろ姿を眺めため息をついたとき、こちらを見ている女性に気が付いた。
 
 高級ホテルにふさわしくない、露出の多い服装の若い女性。

 
 あぁ、彼女があの男が言っていた相手か。
 
 相手がどんな男かも知らず待ち合わせにやってくるなんて、警戒心がなさすぎる。
 
 ひと言忠告しておこう。
 
 そう思い彼女へと近づく。
 
 けれど正面から彼女を見たとき、俺は驚きで目を見張った。

「君が待ち合わせの相手か……」
 
 ミニスカートにピンヒールという派手な服装に、アイラインをはっきりと引いた濃い化粧。
 
 けれど、背中まである綺麗な黒髪や、真っすぐにこちらを見る瞳には見覚えがあった。
 
 数日前に岩木から見せられた、政略結婚の相手。 
 
 一ノ瀬議員のひとり娘だ。 
 
 名前までは憶えていないけれど、間違いない。

 写真では清楚でおとなしそうな印象だったのに、こんな派手な格好で、マッチングアプリで出会った男と待ち合わせをしていたなんて。
 
 岩木から聞いた話ではおしとやかな箱入りのお嬢様という話だったが、家族の目を盗みいつもこうやって遊び歩いているんだろうか。
 
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