離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 どうせ政略結婚の相手もそんな女だろうと思っていたのに、目の前の彼女はとても純粋でまるで一度もデートしたことがない少女のように見えた。
 
 目をキラキラさせてうれしそうに理想のデートを話す姿を見ているうちに、あきれて小さく噴き出してしまった。 
 
 すると、俺の笑い声に気づいた彼女がこちらを見上げた。
 
「あ、ごめん。よくばりすぎだよね」
 
 我に返り恥ずかしそうに口をつぐむ。
 
 その姿をかわいいと感じてしまう。

 せっかくの休日を好きでもない女のためにつぶすなんて、時間の無駄でしかない。
 
 普段の自分ならそう言って断っただろう。
 
 けれど箱入りのお嬢様が変装してデートをするなんて、いったいなにを考えているのか興味が湧いた。
 
 まぁ、ちょうど今日はこれから予定もないし、暇つぶしに付き合ってやってもいいか。 
 
 そう思いながら彼女を見下ろす。
 
「じゃあ、全部するか」
「え?」
「今君が言ったこと、全部叶えてやる」
 
 そう言うと、彼女は目を丸くしたあとうれしそうに顔を輝かせた。
 
        

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