離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
3 夢のようなデート
◆夢のようなデート




 忍さんの車に乗り、そわそわしながらシートベルトを締めた。

「とりあえず、水族館に向かうか」

 慣れた様子でハンドルを握り車を発進させる彼を見て、ふたりきりでデートなんだと実感する。

 なんだか緊張してしまって窓の外ばかり見ていると、「どうした」とたずねられる。

「べ、別に。普段は後部座席に座るから、助手席から見る景色が新鮮だっただけだよ」

 そう言い訳すると、彼は声を上げて笑った。

「普段は後部座席って……。キャラがブレブレだな」
「え?」

 キャラってなんだろう。
 意味がわからず首をかしげる。

 彼は「なんでもない」と首を振った。
 ちらりとこちらに向けられた意地悪な視線が色っぽくて、鼓動が速くなる。

 深呼吸をしながら横目で忍さんを盗み見た。

 運転席と助手席って、こんなに距離が近いんだ。

 少し手を伸ばせば、綺麗な首筋やハンドルに添えられた長い指に簡単に触れられる。
 
 普段の移動は父の事務所の車を使う。
 運転手がついていて、私は後部座席に座ることが多いから、助手席から見る景色が新鮮だ。
 
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