離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 恥ずかしくて頬がじわじわと熱を持つ。
 
「別に悪くない。ただ、かわいいなと思っただけだ」
「か……っ!」
 
 かわいいって……っ!
 

「なにか食べるか。なにがいい?」
「ええと……。私はアレルギーも苦手なものもないから、なんでも大丈夫」
 
 彼の質問に答えると、ぽんと頭を小突かれた。
 
「苦手なものじゃなくて、君の好きなものを聞いてるんだ」
「好きなもの……?」
 
 普段食事をするときは、すべて父がお店を決めた。
 
 付き合いやしがらみの多い国会議員だから、家族での外食すら父は自分の利益となる店を選ぶ。 
 
 それが当然だと思っていたから、私の好きなものと言われても戸惑ってしまう。
 
「本当に、私の好きなものでいいの?」
「ああ」
「どんなものでも?」
 
 私が念を押すと、忍さんが笑った。
 
「せっかくのデートだろ。どこでも連れてってやるから、気を使わず自分の好きなものを言ってみろ」
 
 その言葉に、ぱぁっと目の前が明るくなったように感じた。
   
  
 

 
「本当に甘いものが好きなんだな。店に入ったときからずっと目が輝いてる」
 
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