離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 そんなところを触られるのは生まれてはじめてで、口を引き結んでいるのに甘い声がもれてしまう。
 
「ん、ん……っ」
「かわいい反応だな」
 
 忍さんが私を観察するようにみつめながら指をすべらせる。
 
 そして私の体がびくんとはねるたび、喉の奥で笑う。
 
 その綺麗な目で見つめられるだけで、頭がぼうっとしてしまう。
 
「先にシャワーを浴びるか?」
 
 耳元でたずねられ、「……やだ」と首を横に振った。
 
「忍さんと一秒も離れたくない」
 
 ぎゅっと彼の首にしがみつき素直な気持ちを伝えると、忍さんが息を吐いた。
 
「そうやって、あまり振り回さないでくれ。手加減ができなくなる」
「振り回してなんか……」
「無邪気だと思って油断していたら、突然大胆になって誘ったり、こんな色っぽい顔で見つめたり。今日一日振り回されっぱなしだ」
 
 こんなつもりじゃなかったのに……と低い声でつぶやいた彼の言葉に不安になる。
 
 振り回したつもりはないけれど、知らないうちに忍さんを困らせてしまっていたのかもしれない。
 
「ご、ごめんなさい」
 
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