離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
『ちょっと琴子! どういうことかわからないんだけど!』
 

 ひとみの言葉に、私はスマホを耳に当てながらうなずく。
 
「私もなにがなんだかわからないよー!」
 
 顔合わせのあと、家に帰ってきた私はこの驚きを誰かに伝えたくてひとみに連絡をした。
 
 話を聞いたひとみは、『そんなことってある!?』と大興奮だ。
 
『アプリで会って恋に落ちた人が政略結婚の相手だったなんて、運命じゃん!』
「そうなんだけど……。でも忍さん私に『はじめまして』って言ったし、すごく他人行儀だったんだよね」
 
 あのあと一緒に食事をしたけれど、忍さんと私が言葉を交わすことはほとんどなかった。
 
『もしかして、デートしたときは派手な服装でメイクも濃かったから、琴子だって気づいてないのかな』
「そうかもしれない。デートのときは偽名を名乗っていたし、長かった髪もばっさり切ったし……」
 
 露出度の高い服を着てロングヘアだった私と、今日の和装にボブヘアの私とじゃ、印象がまったく違っただろう。
 
 忍さんが気づかなかったのも無理はない。
 
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