離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 忍さんにこんなつぶれたケーキを食べてもらうのは申し訳ないから、ケーキを持ってきたことは内緒にしよう。
 
 そう思いながら気を取り直し立ち上がる。
 
 そんな私を忍さんはどこか複雑そうな表情で見ていた。
 
 靴を脱ぎ、部屋の中を案内してもらう。
 
 できたばかりの高級マンション。
 
 しかもその最上階。
 
 部屋の内装はもちろん、眺望も素晴らしかった。
 
 3LDKの広々とした室内を見て回りながらため息をもらす。
 
 インテリアはシンプルだけど温かみもあるイタリアブランドでそろえられていた。
 
 リビングは大規模なホームパーティーを開けそうなくらい広く、メインとなる大きなソファのほかにも、ひとりがけのソファやスツールがセンス良く置いてある。
 
 そのうちのひとつ、ゆったりとしたひとりがけのソファはいつかひとり暮らしをしたら部屋に置きたいとひそかに憧れていたものだ。
 
「すごく素敵ですね……」
 
 自由に見ていいと言われ、戸棚やキッチン収納をあちこち開いて感激する。
 
 キッチンには調理道具や食器はもちろん調味料までしっかりそろっている。
 
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