離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「気に入りましたか?」
 
 岩木さんの問いかけに、全力で首を縦に振った。
 
「はい、とても。いつか実家を出たらこのソファがほしいって憧れていたんです。キッチンもすごく使いやすそうだし、理想を通り越して夢みたいです」
「それはよかった。一ノ瀬家にリサーチしたかいがありました」
「リサーチ?」
 
 私が首をかしげると、忍さんが不機嫌そうに咳ばらいをした。
 
「余計なことを言うな」と岩木さんを睨む。
 
 三つある洋室のひとつには私の荷物が綺麗に収納されていて、もうひとつはほぼ空。
 
 そして最後の部屋はメインベッドルームだった。
 
 中央に置かれた大きなベッドを見て、鼓動が速くなる。
 
 今日からここで忍さんと一緒に寝るんだ……。
 
 彼に抱かれたことを思い出して頬が熱くなった。
 
 どうしよう、緊張する。
 
 でも、夫婦なんだから一緒のベッドで寝るのはあたり前だよね。
 
 そんなことを考えながら口を開いた。
 
「し、忍さん。ふつつか者ですがどうぞよろしくお願いいたします」
 
 彼の名前を呼ぶだけで、緊張して声が裏返ってしまう。
 
「あ、あの。これから……」
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