離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
デートのことを切り出す前に、こんなふうに拒絶されてしまうなんて……。
呆然としながら辺りを見ると、リビングのテーブルの上の形の崩れた箱が目に留まる。
忍さんと一緒に食べようと思っていたケーキだ。
よろよろと立ち上がり箱を開く。
美しかったケーキが見る影もなく崩れていた。
不格好で情けなくて、まるで今の私みたいだ。
「あぁ……」とため息まじりの声がもれる。
私はこれからどうすればいいんだろう。
彼が言う通りこの部屋でおとなしく暮らすことしかできないんだろうか。
離婚までの二年間、そんな生活を送るなんて。
私の存在を否定されたようでむなしすぎる。
落ち込みながら崩れたケーキに手を伸ばす。
このまま捨てるのはもったいなくて、ケーキの上から転げ落ちクリームまみれになったフルーツをつまみ口に運んだ。
つや出しのナパージュが塗られたフルーツは甘酸っぱくてみずみずしかった。
同時に濃厚なクリームが舌の上でとけ甘みが広がる。
そのおいしさに自然と頬がゆるんだ。
「おいしい……」