離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 つぶやくと、忍さんとケーキを食べたときのことを思い出した。
 
 ちょっと意地悪な表情も、見守るような優しい視線も。
 
 あの夢のように楽しかった時間は全部ちゃんと覚えてる。
 
 忍さんが私を必要としていなくても、私は彼が好きだ。
 
 そんな気持ちがこみあげ背筋が伸びる。
 
 甘いものを食べただけで元気がでるなんて、我ながら単純だ。
 
 だけど、どんなときも母のように前向きで笑顔で過ごしていたいと思う。
 
「私はここで自由に過ごせばいいんだよね」
 
 彼から言われた言葉を繰り返すと、私は前を向き「よし」と息を吐いた。



 

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