離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
5 御曹司の葛藤 忍side
◆御曹司の葛藤 忍side
 
 



「副社長。今の態度はあんまりでは」
 
 琴子を残しマンションから出た途端、岩木に棘のある口調でそう言われた。
 
「あんまりとは?」
「政略結婚とはいえ、あんなふうに突き放すなんて琴子さんに失礼ですよ。彼女のなにがそんなに気に入らなかったんですか」
「俺がなにか失礼なことをしたか?」
 
 岩木の言っている意味がわからず眉を寄せる。
 
「失礼なことだらけですよ。この政略結婚を受けると決めたのは副社長ご自身でしょう? それなのに、必要なとき以外ここへは帰らないとか、極力顔を見せないようにするとか、冷たいことばかり言って」
「俺は彼女を思ってそう提案したんだが」
「どこがですか! あれじゃあ琴子さんの存在を否定しているようなものですよ。だいたいどうして一緒に暮らさないんですか。顔合わせまではこの結婚に乗り気だったのに。すぐにでもふたりで暮らしたいと新居を用意して、一ノ瀬家の使用人にリサーチして彼女が気に入りそうなインテリアもすべてそろえて」
「……それは、うぬぼれていたんだ」
 
 岩木の言葉を遮りつぶやく。
 
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