離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「なるほど。自分は彼女に嫌われているけど、ほかの男と結婚するのも許せないと」
「そういうことだ」
「だから、あのマンションに彼女を閉じ込めてほかの男が近づかないように囲っておこうと」
「別に閉じ込めるつもりはない。少なくとも俺と結婚している間は自由に生きてほしいと思っているだけだ」
 
 水族館の大きな水槽の前で、ゆったりと泳ぐ魚に見とれていた琴子の表情を思い出す。
 
 裕福だが厳しい家庭に生まれ、恋をしたこともないまま政略結婚させられることになった琴子には、水槽の中で生きる魚たちすら自由に見えたんだろう。
 
 岩木は俺の話を聞くと、これでもかというほど大きなため息を吐き出した。
 
「とりあえず副社長がものすごく恋愛下手で、間違った方向に恋心をこじらせてることはわかりました」
「は? 誰が恋愛下手だと」
「やっぱりモテすぎると性格がゆがむんでしょうね」
「さっきからものすごくけなされている気がするんだが」
「けなしてません。ただ事実を言っているだけです」
「余計ひどくないか」
 
 俺が不機嫌そうに眉をひそめても、岩木は涼しい顔をしていた。
 
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