離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 これで忍さんが突然やってきても大丈夫だ、と胸を張る。
 
 まぁ、彼が理由もなくここを訪れることはないんだろうけど。
 
「よし、勉強しようっと」
 
 そう声に出してから、ダイニングテーブルにつきノートPCを開く。
 
 忍さんに『ここでなにもせず自由に過ごしてくれればいい』と言われたときは、私の存在自体を否定された気がしてショックだったけど、落ち込んでも仕方ないと気持ちを切り替えた。
 
 私は私の好きなことをしよう。
 
 この環境の中で、精一杯前向きに生きてみよう。
 
 そう割り切ってしまえば、気持ちも明るくなる。
 
 しばらく集中していると、インターフォンが鳴った。
 
 モニターを確認すると、忍さんの秘書の岩木さんだった。
 
「今開けますね」
 
 モニター越しに声をかけ、オートロックを解除する。
 
 岩木さんはこうやって定期的に私の様子を見に来てくれる。
 
 困っていることがないか、気を使ってくれているようだ。
 
 玄関に入ってきた岩木さんは、「前にお話ししていた本を、たまたま出先で見つけたので」と書店名の入った紙袋を取り出した。
 
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