離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 なにが言いたいのかはわからないけれど、私がここから出たいと思っていると受け取られたようだ。
 
「形だけだとしても、私は忍さんの妻ですから。いつ忍さんがここに帰ってきてもちゃんと出迎えてあげられるように、待っていたいんです」
 
 私がそう言うと、岩木さんは天井を仰ぎ額に手を当てた。
 
「本当にいじらしいというか、けなげというか。今の言葉を副社長に聞かせてやりたいです」
「でも私がそんなことを言っていたと忍さんが知ったら、きっとうっとおしがりますよね」
「どうしてそう思うんですか?」
「だって、忍さんはこの政略結婚に納得していなくて、私の顔も見たくないからここへ帰ってこないんですよね?」
「あー……。あの副社長の態度はそう取られてしまいますよね」
 
 岩木さんは大きくため息を吐き出す。
 
「でも、忍さんが私を妻だと認めていなくても、なにかあったときは力になれるように、自分にできることを頑張りたいんです」
 
 だって私は忍さんが好きだから。
 
「本当に、琴子さんは副社長にはもったいないくらい素敵な女性ですね」
 
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