先輩といろどる恋。˚✩
「いないですねー…」
紫吹ちゃんを探し始めて数時間。夕方。
一颯くんはバイトの時間でバイトに行ったし、あったことも無い私達が話しかけて素直に応じてくれるかも分からない。
「あれじゃない?」
「え?」
随分遠くまで足を伸ばした公園のブランコに座る女の子を先輩が指を指した。
指の先を見ると本当に紫吹ちゃんらしき子が座っていて私は急いで駆け寄る。
「紫吹ちゃん!」
駆け寄って名前を呼ぶ私を紫吹ちゃんは怪訝そうな顔をしていて、不審者だと思われないようにと私は学生証を出した。
「私は七海風子!一颯くん…紫吹ちゃんのお兄ちゃんとお友だちで一颯くんと一緒に紫吹ちゃん探してたんだ!どこも怪我してない??」
怪しまれないよう、怖がられないよう目線を合わせて言うと、紫吹ちゃんは口をもごもごと動かす。
が、何も聞こえない本当に声が小さいようだ…。
「一颯くんもう少しでバイト終わると思うから一緒にアイス屋さん行こう?」
これ何も知らない紫吹ちゃんからしたら絶対不審だよねー。と思いながらも声掛け続けると、ようやく紫吹ちゃんが言葉を聞き取れる音量で発した。
「風子ちゃん、知ってる」
「え?」
「おにーちゃんが初めて負けた相手だって言ってた」
突然思わぬところで知られていて驚いたし、一颯くんが人の話をするんだあなんて少し失礼なことを思ってしまう。
一颯くんはあんまり他人に気を許さないし興味も持たないし、学校でも友達といるの見たことないくらいだもん。意外すぎる。