不倫彼氏とデートした夜、交通事故に遭ったら、出逢う前に戻っていました。
ラグジュアリーホテルを出た後、私は初夏の夜風に吹かれながら、駅近くのバーを目指した。

今夜はマッキーが手配するタクシーに乗って、自宅へ一人で直帰したくない。

マンハッタンとかマティーニとか、強いカクテルを頼んで、この恋を続ける自分に乾杯するつもりだ。

金曜の夜だけれどシックな大人の街に相応しく、行き交う人々は皆もの静かだ。

外資系コンサルティング企業に勤務するマッキーとデートする時は、いつものOLブランドの服ではなく、高価な勝負服を着てくる。
それでもハイスペックな彼が隣にいないと、ハイブランド服の上級女性達とすれ違うのは心理的にキツい。
私の足は自然と早くなる。

「あっ──」

いまだに履き慣れないドレッシーなパンプスが祟った。
舗道の溝にヒールの先がはまり、私は後ろにのけぞった。

それから硬質な金属の何かにぶつかって、仰向けに倒れ、目の前が真っ暗になった──。


           ♡

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