婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

爽が歯に衣着せぬ物言いをするのはいつものことで、あまりの言い様にじろりと睨んだところで何の効果もない。

大きなため息が出そうになるのをウイスキーで飲み干した。

「やっと捕まえて部屋に連れ帰ったら、次の日あいつの部屋に鍵ついてた」
「あはははは! 凄い子だね! 本当に怜士に対する好感度が底ついてる感じなんだ」
「笑い事じゃねぇ」

屈託なく笑う彼は人目を惹く華やかな容姿をしており、こうしてふたりで飲んでいても、周囲の女から向けられる視線の多さに辟易する。

本人も以前は軽い恋愛を楽しんでいたが、ここ最近はじめて気になる存在の女性が出来たらしく、声を掛けられても相手にしなくなった。

とはいえ、あっさり振られてしまったらしいが。

陽菜に指摘された週刊誌の記事も、爽と一緒にいる時に自称モデルのふたり組が強引に同じテーブルに座って飲み始めただけで、その後ホテルに消えただなんていうのは全部でたらめだ。

今後同じようなことがあれば、すぐにその場を離れようと決意している。

「初恋相手の幼なじみなんでしょ? なんでそんなことになってんの?」
「……俺が全部悪いんだ」

陽菜の言葉を誤解していた高校生の頃は、しつこく誘ってくる女子の言うがままにデートに付き合い、『理想の彼氏』として振る舞うことのない俺に怒って去っていくのを追いかけもせず、次に言い寄ってきた女子と同じことの繰り返し。

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