婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
いつの間にか校内では『遊び人』なんて認識を持たれていたらしいが、出掛けていただけで手を繋いだこともない。
俺との結婚を“政略結婚”だと割り切り、それまでは他の男と遊ぶと宣言してきた陽菜を、俺もただの“政略結婚の相手”として見ようと思ったが、どうしても無理だった。
陽菜の考えに怒りを感じ、嫉妬に狂いそうになっても、彼女の夢を語る横顔、対等に言い争ってくる気の強さ、俺の夢を応援すると言ってくれた笑顔も、すべてが好きだった。
誰と一緒にいても、陽菜の存在を探し求めてしまう。
父には陽菜との結婚を断る気はないと宣言し、二十五歳になったら必ず手に入れようと固く決意した。
大学に入り、さすがに陽菜を手に入れた時に自分だけ未経験なのも恥ずかしく、また宣言するほど散々遊んできた彼女に童貞だと馬鹿にされるのも嫌で、高校の頃とは違い、遊び慣れていて後腐れのなさそうな割り切った何人かの女性とその場限りの関係をもったこともあるが、それだけだ。
陽菜が考えているほど経験豊富なわけでも、遊び歩いていたわけでもない。
就職してからは仕事を覚えるのに必死だった。
特別扱いされたくなくて、母の旧姓である『佐々木』を名乗って研鑽を積み、子供の頃に陽菜と語った夢を実現させるための布石を打つのに駆けずり回っていた。