婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「告白は? ずっと好きだったんでしょ?」
「したけど、信じてなさそうだった」
「そっか。俺たち振られんぼ同盟でも結成する?」
「俺は振られてねぇ」
誤解していたことを打ち明け、なりふり構わず告白したが、陽菜はただ戸惑っていた。
結婚する前に恋愛をしたいと豪語していた彼女。
あの日ホテルでも言っていた。学生時代は勉強とバイトに明け暮れ、恋愛している暇などなかったと。
それほどまで俺との結婚を回避しようともがいていたのだと思うと切ないが、今まで陽菜に恋愛経験がないと聞き、喜びを感じたのも事実だ。
俺だって、この結婚を政略的なものとして考えているわけじゃない。
陽菜には逃げ道を塞ぐために会社の資金援助を持ち出してしまったが、ただ彼女を好きだからこそ結婚したいし、陽菜の気持ちも手に入れたい。
デートをする相手がいるようだし、グズグズしている暇はなさそうだ。
来年度、後継者として指名されるのを目処に、新プロジェクトとして幼児教育の部門が立ち上がる。
ようやく俺の夢、いや、俺と陽菜の夢が形になろうとしている。
仕事だけじゃなく、陽菜とのこともうまくいくように努力するしかない。
今はまだ信用されなくても、俺の気持ちを伝えていこう。
他人事だと面白そうに笑う爽を横目に睨みつつ、俺は「絶対に陽菜を手に入れてみせる」と何度目かの決意を固めていた。