婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「それで、どうだった? 大内くんとの食事」
それぞれオーダーしたドリンクがきて乾杯したところで、待ちきれないとばかりに彩佳先輩が聞いてきた。
居酒屋でハイボールを飲む先輩なんて高校の頃からは想像も出来なかったと、思わず小さな笑いが溢れる。
夜景の見える高級ホテルのフレンチレストランで、お高いワインを嗜み程度に頂いてるイメージというか。
彼女いわく、旦那さんと知り合って世界が広がったのだそう。
今日は彩佳先輩から紹介された大内さんと食事をしてからちょうど一週間後の土曜日。
先輩の旦那さんが息子さんを連れて実家に泊まりで遊びに行っているらしく、ひとりの時間が出来たので、報告会を兼ねて飲みに行かないかと誘われた。
本来なら、園児の保護者と個人的に付き合うのは良しとされないのだけれど、彼女の息子さんが入園するのは来月から。
それまではいいだろうと彼女のお誘いに是非と返事をして、こうしてふたりで創作和食が売りの居酒屋へやってきた。
興味津々な様子を隠すことのない彩佳先輩に苦笑しながら、私は先週会って食事した男性の顔を思い浮かべた。