婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

野田さんは今『やっと帰ってきた』と言った。

それは私が現在ここに住んでいると知っているということ。

ずっとここで待っていた? もしかして、以前後をつけられてたことがある……?

「まりあの母親になる女性には、今度こそ貞淑さが必要なんですよ。以前はご実家に住んでいたのに、どうして引っ越してしまったんですか?」

ぞわりと不快感が体中に走り、呼吸が浅くなる。

一体いつから見られていたんだろう。

一歩ずつ近付いてくる野田さんから距離を取りたくて後ずさる。

どうしよう。保護者だから下手な対応は出来ないと思うのに、怖くて一目散に逃げてしまいたい。

「ねぇ陽菜先生、もしかして男と一緒に住んでるんですか?」

ついに目の前に立ち塞がれ、ぐっと肩を強い力で掴まれた。

「い……っ!」

声を上げたくても、喉に張り付いたように音にならない。

恐怖に足が竦んで動けなくなっていると、後ろから大声で名前を呼ばれた。

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