婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

「大丈夫だったか?」

辿り着いた部屋のリビングで、ほっと息を吐いた私を気遣わしげに見る。

「うん、ありがとう」

今まで散々怜士を避け続けていたのに、自分でも驚くほど自然にお礼の言葉を口にすることが出来た。

それだけ野田さんに対して恐怖を感じ、守るように隣にいてくれた怜士に頼もしさと安心感を覚えていた。

「さすがに家まで来られて怖かったけど、担任のクラスの保護者だし、どうしたらいいのかわからなかったから助かった」

緊張の糸が緩んだのか、スラスラと言葉が出てくる。

「まさか野田さんが麻生の関連会社で働いてるとは思わなかったけど。あ、でもよかったの? 一応後継者ってこと伏せて働いてるんだよね」

確か顔合わせの日にそんな話をしていた気がする。私のせいで情報が漏れてしまわないだろうか。

「陽菜を守れたなら、そんなことどうでもいい」

突然手を引かれ、そっと腕の中に囲い込まれる。

怜士は抱きしめるというよりも包み込むような優しい力加減で私に腕を回し、大きな手で頭をゆっくりと撫でた。

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