婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
冷え切った夫婦関係ならさっさと離婚すればいいものを、父は旧華族であるプライドや体裁から、母は働いたこともなく家事も家政婦任せの自活能力のなさから、形ばかりの家庭を維持している。
私の家だけでなく、霧崎家の親戚はどこもそんな家庭ばかり。
子供の頃から盆暮れの集まりが苦手で仕方なかった。
父や叔父たちは酒を飲みながら妻や子供を放置したまま仕事の話。伯母たちは子供の自慢話でマウントの取り合い。
従兄弟達も、将来誰が霧崎商事を継ぐのかと躍起になっていてギスギスしていた。
霧崎家の男児が継ぐとされているので、私はその醜い争いに加わらずに済んだけど、母は長男である父に嫁いだのに男の子を産めなかったことでかなりきつく当たられていたし、親戚の中でも肩身が狭そうだったのをよく覚えている。
当然ながら父がそんな母を庇うことはなかった。
中学に上がる頃には勉強や部活を理由に、親戚の集まりにいくのをやめた。
そんな裕福とはいえ残念な家庭で育った私が、この結婚を拒むのは我儘なんだろうか。
お見合い結婚の末に破綻した夫婦を見て育った私には、全くと言っていい程この結婚の先に希望はない。
まして相手は世界で一番嫌いな男。幸せが待っているはずがない。