婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「ちょっ、大丈夫?」
「平気。ってか待って、元カノって……」
「彩佳先輩、一番長く付き合ってたよね。それでね、再会した日に少しお茶して、今日は紹介してもらった人とのデートの報告で」
「は?! 待って、全然話が見えない」
混乱して眉間のシワが徐々に深くなっていく怜士の表情が可笑しくて、私は思わず声を上げて笑ってしまった。
そんな私を、怜士はじっと見つめている。
「……久しぶりに見た。ちゃんと笑った陽菜の顔」
ふとそんなことを言われて、怜士に対して如何に酷い態度を取っていたのかと思い返す。
「さっきも。まぁ、意図して笑わせたわけじゃないから、若干不本意だけど」
苦笑交じりでつぶやく怜士に対し、『今まで酷い態度とってごめん』と言えない自分が恨めしい。
気が強すぎて可愛くないと自覚しているのに、どうしても素直になれない。
何も言葉を返せないでいると、私のスマホがメッセージの着信を知らせた。
「あ、大内さん」
ディスプレイを見ると、今まさに話題に出ていた人からだった。