婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
先週のお礼と、彩佳先輩から【今回は縁がなかったということに】と一方的な連絡が来たこと、さらに私の恋がうまくいくよう祈っていると、手軽なメッセージアプリにそぐわない丁寧な文章で書かれている。
彩佳先輩、一体大内さんにどんな説明の仕方をしたのだろう。
「誰?」
「先週、食事した人。彩佳先輩から紹介されたの」
先輩から言われた言葉を、そのまま伝えてみた。
『この前言ってた“意趣返し”っていうのは、私にまったく靡いてくれなかったくせに、この歳にもなってまだモタモタしてる麻生くんに改めてガッカリしちゃったから。あなたに男性を紹介して発破をかけてみようかなって。ようやく告白したってことは、私の作戦は成功ってことね』
怜士は小さく舌打ちすると、「昔から苦手なんだよな、あの人」とため息を吐いた。
「元カノなのに?」
「どうせ全部聞いたんだろ? 大した付き合いじゃなかったって」
「う、まぁ……」
本人のいないところで色々話したり聞いてしまったバツの悪さから返事を濁していたけど、怜士の関心は別のところにあったらしい。
「断るよな?」
「え?」
「また会いたいって連絡だったんだろ、それ」
顎でしゃくられ、再びスマホに視線を落とした。