婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
現在の麻生グループの主軸は、中学生や高校生に向けた通信教育や塾の経営で、未就学児に対する教育には着手していない。
怜士が夢とする“勉強は楽しい”を提供する会社にするには、より良い教材を作るのと同時に、幼児教育に力を入れるべきだと、子供ながらに夢を語り合った。
「あぁ。まだ形になっていない段階だけど、ようやく親父の承認を得て新事業部が立ち上がる。そこの責任者を任されることになってるんだ」
「凄い! そっか、怜士の夢が叶うんだね」
私が思わず声をあげると、彼は嬉しそうに頬を緩めた。
「あぁ、これからだ。まずは未就学児向けの教室から始めようと思ってる。他社がやってる既存の教室とはひと味違うものを提供したい」
「ひと味違うもの?」
「例えば、教室とはいえ机を置かないとか、新たに得た知識を発表出来る場を毎週設けるとか。固定概念に囚われない新しい形の幼児学習を作り上げて、学ぶことは楽しいことだと体験出来るような教室にしたい」
展望を語る怜士の顔は、中学生の頃と変わらずキラキラと輝いている。
「いいね! いっそのこと、場所だって固定しなくてもいいよね。この日は公園集合、次の週は教室で先週見つけたものの発表会、とか。小さい子供にとって、どんなことだって学びの対象になる。机の上でひらがなとか足し算を勉強するだけじゃなくて、もっといろんなものに触れて知識を増やしていく幼児教育って素敵だと思うよ」
頷きながら言葉を返せば、怜士は嬉しそうに顔を綻ばせた。