婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「場所を固定しないっていうのは凄くいいな。教材も専門家の意見を取り入れて一から準備するが、出来れば家庭でも学習の習慣がつくようなものを考えてる」
「学習の習慣か。保育園で働いてるとね、仕事をしてるママって本当に忙しいんだっていうのがわかるの。料理に洗濯にお掃除をして、仕事に行って、帰ってきたら子供の相手をしながらまた家事をして」
「そうだな」
「そんな中で毎日学習に時間を割こうと思うなら、短くて子供もママも楽しいものだといいよね」
私の話を聞きながら、怜士は何度も頷いている。
「確かに、教材も机に向かってするものよりも、隙間時間で出来るものを取り入れたいな。風呂で使えるものとか」
「それいいね! 寝る前に三十秒とか一分で読み切れるお話を読むのはどうかな。保護者じゃなくて、子供本人がママやパパに読んであげるの」
怜士と話せば話すほど、固く閉ざされていたはずの心がほぐれてくるのがわかる。
学生時代と変わらない怜士に、心が動くのを止められない。
「さすが現役の保育士だな。背中を押された気分だ」
その言葉で、自分が保育士になろうと決意した理由を思い出した。
「ねぇ、私がどうして保育士を目指したか、知ってる?」
「子供が好きだからって、小学生の頃から夢だって言ってなかったか?」
不思議そうな顔をした彼に、私は思い切って心の内を伝えた。