婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

「うん、子供の頃の夢っていうのも本当。でもね、怜士の学ぶ楽しさを伝える教育を目指すっていう夢を聞いて、幼児教育の現場で働いていれば、怜士の役に立てるかもしれないって思った。怜士の話を聞いて、私は絶対保育士になろうって決意したの。今話してて、保育士になってよかったって思っ……た……」

話しながら、こんなの当時の想いを告白しているのも同然だと急に恥ずかしくなった。

それどころか、今もこうして怜士の熱い仕事への情熱を聞けば、彼の役に立ちたいという思いが沸いてくることに、自分でも驚きを隠せない。

あの頃の私も、こんな風に怜士に恋をしていた。

顔が徐々に熱くなり、空調が効いている筈なのにじんわりと汗ばむ。

「陽菜」

熱っぽい眼差しは私の体温をさらに上げ、高鳴る鼓動が部屋中に響き渡ってしまいそうなほど大きくなる。

おにぎりを食べ終えた口の中はカラカラで、コクンと唾液を飲み込む音さえ彼に聞かれてしまわないかと不安になった。

「なんてね!こんなこと聞かされてもしょうがないだろうけど」
「おい、陽菜」
「今日は助けてくれてありがとう。あと、おにぎりもごちそうさま。おやすみ」

早口で捲し立てながら勢いよくソファから立ち上がると、私は逃げるように自分の部屋へと入った。

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