婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
再び腕の中に閉じ込めると、陽菜は慌てふためいて抜け出そうともがく。
「暴れんな。これも“恋人ごっこ”だろ。一日一回はハグすること」
「ハグ⁉ なんで?」
「俺がしたいから」
「な……っ」
抱きしめた陽菜を見下ろすと、耳どころかうなじまで真っ赤に染まっている。
あまりに初々しい可愛らしさに、こちらの欲望も煽られた。
「陽菜、真っ赤。可愛い」
耳元で囁いて、熱くなった耳朶にそっと唇を寄せる。
「や……っ」
甘い声を漏らしながら肩を跳ねさせ、必死に小さく首を振っている。
「陽菜が怖がることはしないと約束する。だから、触れさせて」
無理強いはしたくない。
少しでも陽菜が嫌がる素振りを見せれば、すぐにこの腕を解く気だった。
それなのに、熱っぽい眼差しでこちらを見上げ、困ったように眉を下げるだけ。
いつもの強気で武装した彼女は鳴りを潜め、ただ可憐で無垢な少女のように俺を潤んだ瞳に映していた。