婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

可愛すぎてクラクラする。

「これも、恋人ごっこ?」
「そう。陽菜が俺にどこまで許せるか試したらいい。嫌だったら言って」

俺は、すぐにでも“ごっこ”じゃなくていい。だけど、陽菜の気持ちが育つのを待ちたかった。

抱きしめたまま、右手の親指でそっと陽菜の唇をなぞる。

少し小さくぷっくりとした弾力のあるそこに噛みつきたい衝動を抑え、以前一度だけ味わったときのことを思い出した。

「あの日、陽菜としたのがファーストキスだった」
「えっ?」

いくらデートした女子に強請られても、割り切った女性と関係を持っても、キスだけは頑なにしてこなかった。

「なんで……だって……」
「初めてのキスは、絶対陽菜とするって子供の頃から決めてた」

それなのに、あんな怒りに任せた乱暴なキスをしてしまうなんて。

昔から何に関してもそれなりに器用にこなしてきたというのに、陽菜のことだけは空回って失敗ばかり。

好きという気持ちが大きすぎて、なにもかもうまくいかない。

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