婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
そっと陽菜の顎を掴み顔を上げさせると、戸惑いと羞恥を宿した瞳が大きく揺れている。
「やり直していい?」
なにを、と言わなくても、陽菜には伝わったらしい。
「……ダメ、って言ったら?」
「すげぇしたいけど我慢する。陽菜の嫌がることは、もう二度としたくない」
陽菜には散々ダメなところを知られている。
今さら取り繕ってかっこつけたところでしょうがないため、本音で答えた。
「なんか、ずるい……」
「なにが」
「だって……」
陽菜が下唇を噛み、視線を逸らす。
それなのに、掴んだ顎も抱き寄せた身体も引かれることなく、俺のそばから離れはしない。
彼女の気持ちはわからないが、こんなの期待するなと言う方が酷な話だ。
「そんな顔するなら、俺の都合のいいように取るけど」
最後通告をするように顔を覗き込と、「その余裕そうな顔がムカつく」と真っ赤な顔で悪態をついてくる。