婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
少し強引に陽菜の顔を上げさせ、今にも滴が零れそうな濡れた瞳にキスを降らせる。
「や、見ないでって……」
「俺は見たい。どんな顔で俺とキスしてるのか」
「バカ! 変態!」
「男なんてみんなこんなもんだよ」
「嫌がることはしないって言った」
「嫌だったか?」
こうしてポンポン言い合っている間も、陽菜は俺から距離を取ろうとしない。
そのことが嬉しくて、再び唇を奪う。
「ん……っ」
そっと舌で唇の輪郭をなぞると、耐えきれなくなった陽菜が小さく口を開く。
我慢できずに舌を差し込み口付けを深めると、所在なさげにしていた彼女の手が、縋るように俺の胸元を掴んだ。
それに気をよくして陽菜の舌を絡め取り、腰を抱く腕に力を込める。
より身体が密着した状態でのキスは、快感よりも深い幸福感があった。
陽菜をこの手に抱き、口づけている。
歯列をなぞり、頬の裏側まで味わい、舌を吸い上げる。陽菜が反応する箇所は殊更何度も舌先で擽った。