婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
ううん。きっと、本当はずっと好きだった。
初恋が無惨に散った悲しさに、ずっと怜士を嫌いだと思い込むことで心の均衡を保ってきただけ。
政略結婚を頑なに拒んだのも、怜士が憎かったからじゃない。
好きな人から愛されていないのに結婚するなんて、そんな惨めなことはないと思ったからだ。
こうして怜士から一途に想いをぶつけられて、嬉しくないわけじゃない。それは自分の気持ちを自覚した今はなおさら。
だけど、怜士が“恋人”であることに慣れれば慣れるほど、彼の過去にもやもやもしている。
好きになったからこそ、どうして私を好きだったのに他の女の子と関係を持ったりしたんだろうと、どうしようもない過去に嫉妬している。
だけど、それについては怜士は謝ってくれたし、弁解もしないと言っていた。今さら蒸し返すことではないのはわかっている。
私が心の中で葛藤を繰り広げていると、怜士が思い出したように口を開いた。
「なぁ。陽菜の夏休み、今月末って言ってたよな?」
「うん、二十四日から四日間」
幼稚園や学校と違い、保育園に夏休みはない。