婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
それに、そろそろ私の気持ちを怜士に伝えるべきなのではないかとも思っている。
いくら過去にもやもやしていたとしても、時間は戻らない。
今の怜士を見て、私は彼が好きなんだと自覚したのだから、恋人ごっこというお試し期間に終止符を打つのは私の役目。
この旅行が、そのきっかけになったらいいな。
そんなことを考えながら迎えた旅行初日。私たちは国内有数の避暑地にあるリゾートホテルにやってきた。
ネットや旅行雑誌など、どの媒体を見ても“豪華”や“最高級”の文字が踊るホテルは、和と洋が融合された外観で、自然豊かな広大な敷地に本館と一棟貸しのヴィラタイプからなっている。
会員制のプライベートホテルらしく、ここに宿泊できるのはオーナーとなった会員と紹介者のみ。
都会の喧騒を離れ、空の青と木々の緑が美しい景観に感嘆のため息が漏れる。
「すごい……」
ホテルの敷地内には水路が張り巡らされ、東屋がいくつも設置されている風景も野趣に富んでいる。
本館の一階にはチェックインカウンターの奥にレストランやカフェ、バー以外に、アートを楽しめる美術館も併設され、他にもプールやテニスコート、エステサロンまであるというのだから凄いの一言だ。
観光に街に出なくても、ここだけで何日も楽しめそう。