婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「気に入った?」
「もちろん」
今回怜士が予約してくれたのは、一棟貸しタイプのヴィラスイート。
本館でチェックインを済ませてから案内されたのは、丘の上にある赤い三角屋根の大きなヴィラ。
磨り硝子の壁で囲われていて、青々とした芝生と色とりどりの花が咲いた花壇が可愛らしい庭もついている。
玄関先に荷物を置いて、早速出かける準備をする。
「まずは定番の旧軽井沢銀座通りでも行くか」
「わぁ、いいね! ランチはそこで食べ歩きがいいな」
イギリス人宣教師によって避暑地としてひらかれた旧軽井沢。
私の実家もこの近くに別荘を持っていて、子供の頃は何度か来たことがある。
だけど中学生になった頃から家族旅行にも参加しなくなったので、訪れるのはかなり久しぶり。
記憶も曖昧だし、きっと新しいお店もたくさんあるだろうと思うと、ワクワクしてくる。
「ん」
ふと隣を見ると、こちらに手を差し出している怜士が私を見下ろしている。