婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「全部よ。家や会社のために自分を犠牲にして好きでもない相手に嫁ぐなんてまっぴら! お父さんとお母さんみたいに幸せの欠片もない結婚なんて絶対に嫌!」
言いたいことを言うのなら今しかない。
ずっと我慢してきた気持ちを、ここぞとばかりにぶちまけた。
私の言葉に激昂した父は、ここが一流ホテル内の店だということも忘れて大声を出した。
「お前…っ、勘当するぞ!」
ヒートアップしてきた私達親子の言い争いに、しばらくは呆気にとられていた怜士のお父さんが“勘当”という不穏なワードで我に返ったように仲裁に入ってきた。
「ま、まぁまぁ霧崎さん。陽菜ちゃんも、少し落ち着いて…」
とりなそうとしてくれた怜士のお父さんの言葉を遮り、私は父を睨み返したまま言葉を返した。
「では、そうしてください」
もしかしたらと思っていたから躊躇わずにその言葉を発することが出来たけど、どことなく声が揺れてしまったのが悔しい。
本当はもっと毅然と言いたかったのに、やはりまだ私は両親に期待する気持ちが残っていたんだろうか。