婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「なに?」
「手つなごう」
「え?」
「この人混みではぐれたらまずいだろ」
年間何百万人もの人が訪れる観光地は、夏休みということもあってかなりの賑わいを見せている。
「確かに混んでるけど……」
ハグもキスもしているのに、手を繋ぐだけでも照れくさい。
ためらっている私の手を引き、怜士は強引に指を絡ませた。
「っていうのは口実で。俺がただ陽菜と手繋ぎたいだけ」
重ねた手を口元に持っていき、視線を合わせたまま私の手の甲に唇を落とす。
「そっ…だから、そういうこと」
せっかく避暑地に来たというのに、怜士の言動に熱くなる。
ドキドキと鼓動が弾みっぱなしで、旅行の最初からこんな調子では、明日にはぐったりしてしまうのではと心配になるほどだ。
「言わないと、陽菜には伝わらなさそうだから。今日の格好も可愛い。軽井沢だからリゾートスタイルにしたんだな」
「う、うん」