婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「美味しい!」
「うん、美味いな」
木陰にあるベンチで買ってきたパンやデザートを頬張る。
一緒に食事をするようになって、怜士の食の好みもだいぶ把握できた。
「中学の頃は甘いもの得意じゃなさそうだったのに、今は好きなんだね」
パン屋さんイチオシだという固めのプリンを美味しそうに食べる怜士に笑うと、怜士は首を傾げた。
「昔から好きだけど?」
「えぇ? だってバスケ部にレモンのはちみつ漬け差し入れしたら、もう次からは持ってくるなって言ってたよ? だから甘いものは好きじゃないんだって思ってた」
「あれは、陽菜が俺だけにじゃなくてバスケ部のやつみんなにって持ってきたからだろ。あいつら、陽菜の手作りだってすげぇ喜んでて、俺以外のやつに食べさせたくなかったから」
当時の怜士の本音を聞き、かぁっと全身が熱くなる。
思わず顔を覆って下を向けば、隣でクスッと笑う気配がした。
「なんで陽菜が照れるんだよ。ガキっぽい理由で差し入れ断った俺のほうが恥ずかしいだろ」
嘘ばっかり。恥ずかしいなんて絶対思っていない。むしろ、私を照れさせて楽しんでる雰囲気さえ感じる。