婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

「もうっ! ほら、早く次行こう!」

まだ笑いがおさまっていない怜士の手を引いて、再び散策に戻った。


細い路地の奥に、小さなハンドメイドアクセサリーのお店の看板を見つけた。

「入ってみるか?」
「いいの?」

可愛らしいガーランドに出迎えられ中に入ると、白木の棚に置かれた数々の可愛らしいアクセサリーに目を奪われる。

中でも店内の中央に置かれたチェストに置かれているピアスに心惹かれ、手にとってみた。

軽井沢の町の花であるサクラソウをモチーフにしたアクセサリーで、淡い紫色の花の下に滴を象ったキラキラのパーツが揺れる。

せっかくだから買おうかな、と店員さんを探すと、持っていたピアスを横からひょいっと取り上げられた。

「貸して、買ってくる」
「え、自分で買うよ」

旅行に来てから、私は一度も財布を出していない。怜士に自分の分は払うと言っても、頑なに受け入れてもらえなかった。

「旅行の記念に俺が買いたい。ダメか?」

そんな熱っぽい目で見つめないでほしい。避暑地に来た意味がなくなってしまうと心の中で無意味に叫ぶ。

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