婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~
「ううん、ありがとう」
「他に欲しいものは?」
「あ、これも気になってるの。どっちがいいかな? こっちのセットになってるのも可愛くて……」
言いながら、何も考えずに指さしたアクセサリーの中に指輪があることに気付いた。
いくらカジュアルなハンドメイドのものとはいえ、指輪を買ってもらうってどうなんだろう。
私が戸惑っている間にも、怜士は店員さんを呼んで、気に入ったと言った商品すべて購入してくれた。
これだけ買ってもらったら、指輪がひとつくらい紛れてても何も思わないかな。
自分にそう言い聞かせてお礼を言うと、次に気になっていた教会へと足を延ばした。
避暑地というだけあって真夏なのに暑すぎず、木陰にいれば風が気持ちく肌を撫でていく。
生い茂る木々の中に佇む教会は厳かな雰囲気が漂い、清浄な空気も相まって、心の中の憂いがすべて浄化されていくような気がする。
「なんか、癒されるね。キリスト教徒じゃないのに、教会にくるとピンと背筋が伸びて晴れやかな気分になる」
「あぁ、軽井沢は教会が多いよな。ここは宣教師がひらいた土地だし当然だけど。教会での挙式が日本に広まったのもここからだって言われてる」
説明を聞きながら頷いていると、怜士がじっと見つめているのに気が付いた。