婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

魅力溢れる怜士とこれから一緒にいようと思うのなら、少しでも懸念事項は減らしておきたい。

他の女の子とデートしたり関係を持っていた過去は消せない。

せめて、当時は私に対する想いはなかったことにしてほしい。それならば、怜士がいくら彼女をつくろうと彼の自由だし、私にとやかく言う権利はない。

ただ、私を想っていながら他の女の子と一緒にいられたという前例をつくってほしくない。

過去は見ないふりで切り捨てて、今の私に一途でいてくれる怜士だけを見ていたい。

自分で言いながら、めんどくさい女だなって思う。

でも、それが今の私の偽りのない正直な気持ちだった。

「今が、初恋? お互いに?」

話を聞き終えると、怜士はなにか気付いたような顔で私の顔を覗き込む。

「それは、陽菜も今恋をしてるって意味に聞こえるのは、俺の思い過ごしか?」

期待のこもった瞳で射すくめられ、私も覚悟を決める。

「ううん、思い過ごしじゃない。だから、恋人ごっこをやめようって言ったの。お試しは、もう十分だから。私は、怜士が」
「好きだ」

私の言葉を奪うようにして、怜士の腕に抱き寄せられる。

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